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義肢装具士の業務
●義肢装具士の業務
義肢装具士の約9割は、製作所とよばれる民間企業で働いています。こうした製作所は、資格ができるずっと以前から、医師が処方する義肢や装具の製作を行うほか、おもに義手や義足を使うユーザーから直接注文を受けて義肢の製作を行い、技術を伝えてきた歴史があります。
いわば、職人の世界ともいえるでしょう。技術を習得したら独立していくのが珍しくない業界なので、現在、数多い義肢装具の製作所は、いくつかの製作所から暖簾分けのように全国に広がっていった経緯があります。
製作所は、規模でいうと、大きく3つに分けられます。従業員約600名の川村義肢を筆頭に、100人を超える従業員のいる「最大手」と、50~60人規模の「大手」、そして10人以下の小規模の会社です。多くの義肢装具士は、こうした小規模の製作所で働いています。
他の製造業とは、「大手」の基準が違いますが、オーダーメイドで作るには、このくらいの規模が適当ということでしょう。従業員一人ひとりが、自分の技術を活かして働いています。
今でも、独立していく義肢装具士は大勢います。将来は独立して自分の技術で勝負したい人にも、夢がかなう仕事です。
○大手では分業化が進む
義肢装具士の業務は、営業と製作に大きく分けることができます。義肢装具士の営業の仕事は、医薬品メーカーの営業に似ているかもしれません。定期的に病院はリハビリテーションセンターを訪ね、オーダーを受けます。医薬品の営業と異なるのは、その場で義肢装具を作るための採寸や採型をしたりすることで、病院側も義肢装具士の来訪に合わせて、義肢装具を処方する患者に来院を促したりします。
製作というのは、まさに会社で義肢装具を作ることをさし、注文としては、義肢よりも装具の割合のほうが大きいのが普通です。大多数を占める小規模な製作所では、ひとりの義肢装具士が営業にいって、そこで依頼された注文を自分で製作することがほとんどです。一連の業務を一貫して行うことで、採型のときに得た感覚を反映した義肢装具が製作できるメリットがあります。
大手では、営業と製作を分ける、分業制がはかられつつあります。営業が採型をし、そのオーダーをユーザーの詳細な情報とともに、製作に伝達し、製作を依頼するシステムです。採型する人と製作する人間が違うことで、細かいニュアンスが伝わりにくくなるという面がありますが、分業を装具だけに限ったり、会社を直接訪れる顧客は営業を通さずに直接製作側で営業を行うなど、フレキシブルに対応して、そのような分業化のデメリットを小さくする努力がされています。
○義肢装具士の仕事は、義肢装具を製作し適合させること
医師から義肢や装具が必要と判断され処方されると、義肢装具士がそれを製作することになります。義肢や装具や基本的にオーダーメイドで作るものなので、「採寸・採型=>仮合わせ=>仕上げ=>最終適合」といった一連の作業を経て、完成品が手渡されることになります。
義肢装具士は、この作業のなかで実際の製作を担う傍ら、ユーザーと直接会って、身体に触れて型をとり、きちんとした身体に適合させる医療行為を行います。この行為が実は、資格を持った義肢装具士にしかできないことなのです。つまり、人と器具とのインターフェースの部分を期待され、担っている専門職が義肢装具士。単に製作所で義肢装具を作るだけなら、義肢装具士である必要はないのです。
○最も重要で難しいのが適合の作業
義肢装具でいう適合とは、義肢や装具が身体と接触する部分のフィッティングのことです。例えば、オーダーメイドの靴なら、足にきちんと合っていて、かつ、窮屈でなく、靴擦れしないものを期待します。オーダーメイドで作る義肢や装具も同様です。そのため、身体と義歯装具の接触する部分の面積を大きくして1点に圧力が集中しないようにしたり、逆に圧力に耐えられる骨などの固い部分で圧力を受けるなどの工夫をして、心地よく装着できるようにします。
適合は特に義肢では難しい作業です。現在の義肢は、モジュラー義肢といって骨格にあたる部分の勤続のパーツを組み合わせ、その外側をウレタンフォームなどでカバーして作られるものが大半です。この義肢を身体を接触させるために使われるのが、熱硬化性プラスチック(液体状の樹脂を繊維に染み込ませ、化学物質によって効果させるプラスチック。ポリエステルが代表的)で作られるカップ状の「ソケット」です。
脚や腕を切断した場合、切断した先端部分は断端と呼ばれますが、ここのサイズを測り、石膏で型をとって、型をもとにソケットを作ります。断端は指先で軽く押しても形が変わるくらい柔らかく、型をとるといっても簡単ではありません。ソケットができあがったら、きちんと適合するまで微調整を行い、義肢を仕上げます
○公的機関ではリハビリテーション医療や研究開発に携わります
全国の公立病院や公立リハビリテーションなど、公的機関で働く義肢装具士もいます。大半の義肢装具士が民間の製作所で働くなかで、人数は少ないとはいえ、公的機関で働く義肢装具士の役割は、大変大きなものがあります。
例えば、代表的な公的機関である、国立身体障害者リハビリテーションセンターでは、義肢装具に関する研究所や養成校を併設し、1979年の開設以来、リハビリテーション医療、研究開発、人材育成のすべての面で、義肢や装具の発展における中心的存在となってきましたが、それを実際に担ってきたのが、現場で義肢装具の製作、研究、教育に携わってきた義肢装具士です。
対人援助の視点を持ちながらも利潤を出さなければいけない民間の製作所に代わって、難しい症例に対応した義肢装具の製作や、コストや時間のかかる研究開発および人材育成を引き受け、担ってきたのです。全国の公的機関で働く義肢装具士も、やはり民間では対応しきれない部分を担い、日本の義肢装具全体の発展を支えています。
また、公的機関での義肢装具士は、コメディカルを担う専門職として臨床に重きを置いて働く場合と、研究開発に重きを置く場合が見受けられます。
常勤職員として、リハビリテーション医療にかかわる義肢装具士の場合、民間に委託しやすい装具より、義肢を専門にすることが多くなります。病院に入院して、切断の手術をしたひとりの患者に、義肢を製作し、訓練を行って、退院させるまでの間、医療スタッフと連携して、リハビリテーションに携わります。
使用し始めたばかりの義肢は、細かい調整が必要ですが、常駐で義肢装具士がいることですぐに対応ができ、訓練が滞ることもなく、患者はコメディカルの体制が整ったなかで、リハビリテーションを行うことができます。
一方、研究を中心に行っている義肢装具士もいます。現在、研究開発の中心になっている公的機関は、前述の国立身体障害者リハビリテーションセンターの研究所をはじめ、労災リハビリテーション工学センター、兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所などです。
このなかでも、福祉のまちづくり工学研究所が開発したインテリジェント膝継手や、現在行っている節電義手の研究は、海外に比べ遅れているといわれる研究開発部門において、大きな成果を残しています。こうした開発において、義肢装具士は義肢の専門家として研究に貢献するとともに、工学分野の研究者と実際のユーザーの間に立って研究を支える役目も担ってきました。
その他、臨床面でも、研究開発の面でも、大きな役割を担っている公的機関の義肢装具士ですが、その活躍の場となる公的機関は、民間に移せることは民間にという施策の方針から数が減少しています。
義肢装具士の採用枠も、国立身体障害者リハビリテーションセンター・研究所の補装具制作部で現在6名。ほかではさらに少なく、理学療法士が数十人いる施設でも、義肢装具士は多くて1名の定員枠しかない状態です。
そのため、現在勤務している義肢装具士が定年など何らかの形で辞職する際に、その枠に対しての募集のみが行われるのが通常で、実力とともに、タイミングが合わないと公的機関に就職するのは厳しい状況だといえます。
いまのところは、義肢装具士の採用枠が増えることはなさそうですが、これからさらにリハビリテーション医療が重要視されていくなか、リハビリテーションを担う専門職として、また研究開発を担う一員として、公的機関で働く義肢装具士の存在の重要性が認識されていくことが望まれます。
義肢装具士の約9割は、製作所とよばれる民間企業で働いています。こうした製作所は、資格ができるずっと以前から、医師が処方する義肢や装具の製作を行うほか、おもに義手や義足を使うユーザーから直接注文を受けて義肢の製作を行い、技術を伝えてきた歴史があります。
いわば、職人の世界ともいえるでしょう。技術を習得したら独立していくのが珍しくない業界なので、現在、数多い義肢装具の製作所は、いくつかの製作所から暖簾分けのように全国に広がっていった経緯があります。
製作所は、規模でいうと、大きく3つに分けられます。従業員約600名の川村義肢を筆頭に、100人を超える従業員のいる「最大手」と、50~60人規模の「大手」、そして10人以下の小規模の会社です。多くの義肢装具士は、こうした小規模の製作所で働いています。
他の製造業とは、「大手」の基準が違いますが、オーダーメイドで作るには、このくらいの規模が適当ということでしょう。従業員一人ひとりが、自分の技術を活かして働いています。
今でも、独立していく義肢装具士は大勢います。将来は独立して自分の技術で勝負したい人にも、夢がかなう仕事です。
○大手では分業化が進む
義肢装具士の業務は、営業と製作に大きく分けることができます。義肢装具士の営業の仕事は、医薬品メーカーの営業に似ているかもしれません。定期的に病院はリハビリテーションセンターを訪ね、オーダーを受けます。医薬品の営業と異なるのは、その場で義肢装具を作るための採寸や採型をしたりすることで、病院側も義肢装具士の来訪に合わせて、義肢装具を処方する患者に来院を促したりします。
製作というのは、まさに会社で義肢装具を作ることをさし、注文としては、義肢よりも装具の割合のほうが大きいのが普通です。大多数を占める小規模な製作所では、ひとりの義肢装具士が営業にいって、そこで依頼された注文を自分で製作することがほとんどです。一連の業務を一貫して行うことで、採型のときに得た感覚を反映した義肢装具が製作できるメリットがあります。
大手では、営業と製作を分ける、分業制がはかられつつあります。営業が採型をし、そのオーダーをユーザーの詳細な情報とともに、製作に伝達し、製作を依頼するシステムです。採型する人と製作する人間が違うことで、細かいニュアンスが伝わりにくくなるという面がありますが、分業を装具だけに限ったり、会社を直接訪れる顧客は営業を通さずに直接製作側で営業を行うなど、フレキシブルに対応して、そのような分業化のデメリットを小さくする努力がされています。
○義肢装具士の仕事は、義肢装具を製作し適合させること
医師から義肢や装具が必要と判断され処方されると、義肢装具士がそれを製作することになります。義肢や装具や基本的にオーダーメイドで作るものなので、「採寸・採型=>仮合わせ=>仕上げ=>最終適合」といった一連の作業を経て、完成品が手渡されることになります。
義肢装具士は、この作業のなかで実際の製作を担う傍ら、ユーザーと直接会って、身体に触れて型をとり、きちんとした身体に適合させる医療行為を行います。この行為が実は、資格を持った義肢装具士にしかできないことなのです。つまり、人と器具とのインターフェースの部分を期待され、担っている専門職が義肢装具士。単に製作所で義肢装具を作るだけなら、義肢装具士である必要はないのです。
○最も重要で難しいのが適合の作業
義肢装具でいう適合とは、義肢や装具が身体と接触する部分のフィッティングのことです。例えば、オーダーメイドの靴なら、足にきちんと合っていて、かつ、窮屈でなく、靴擦れしないものを期待します。オーダーメイドで作る義肢や装具も同様です。そのため、身体と義歯装具の接触する部分の面積を大きくして1点に圧力が集中しないようにしたり、逆に圧力に耐えられる骨などの固い部分で圧力を受けるなどの工夫をして、心地よく装着できるようにします。
適合は特に義肢では難しい作業です。現在の義肢は、モジュラー義肢といって骨格にあたる部分の勤続のパーツを組み合わせ、その外側をウレタンフォームなどでカバーして作られるものが大半です。この義肢を身体を接触させるために使われるのが、熱硬化性プラスチック(液体状の樹脂を繊維に染み込ませ、化学物質によって効果させるプラスチック。ポリエステルが代表的)で作られるカップ状の「ソケット」です。
脚や腕を切断した場合、切断した先端部分は断端と呼ばれますが、ここのサイズを測り、石膏で型をとって、型をもとにソケットを作ります。断端は指先で軽く押しても形が変わるくらい柔らかく、型をとるといっても簡単ではありません。ソケットができあがったら、きちんと適合するまで微調整を行い、義肢を仕上げます
○公的機関ではリハビリテーション医療や研究開発に携わります
全国の公立病院や公立リハビリテーションなど、公的機関で働く義肢装具士もいます。大半の義肢装具士が民間の製作所で働くなかで、人数は少ないとはいえ、公的機関で働く義肢装具士の役割は、大変大きなものがあります。
例えば、代表的な公的機関である、国立身体障害者リハビリテーションセンターでは、義肢装具に関する研究所や養成校を併設し、1979年の開設以来、リハビリテーション医療、研究開発、人材育成のすべての面で、義肢や装具の発展における中心的存在となってきましたが、それを実際に担ってきたのが、現場で義肢装具の製作、研究、教育に携わってきた義肢装具士です。
対人援助の視点を持ちながらも利潤を出さなければいけない民間の製作所に代わって、難しい症例に対応した義肢装具の製作や、コストや時間のかかる研究開発および人材育成を引き受け、担ってきたのです。全国の公的機関で働く義肢装具士も、やはり民間では対応しきれない部分を担い、日本の義肢装具全体の発展を支えています。
また、公的機関での義肢装具士は、コメディカルを担う専門職として臨床に重きを置いて働く場合と、研究開発に重きを置く場合が見受けられます。
常勤職員として、リハビリテーション医療にかかわる義肢装具士の場合、民間に委託しやすい装具より、義肢を専門にすることが多くなります。病院に入院して、切断の手術をしたひとりの患者に、義肢を製作し、訓練を行って、退院させるまでの間、医療スタッフと連携して、リハビリテーションに携わります。
使用し始めたばかりの義肢は、細かい調整が必要ですが、常駐で義肢装具士がいることですぐに対応ができ、訓練が滞ることもなく、患者はコメディカルの体制が整ったなかで、リハビリテーションを行うことができます。
一方、研究を中心に行っている義肢装具士もいます。現在、研究開発の中心になっている公的機関は、前述の国立身体障害者リハビリテーションセンターの研究所をはじめ、労災リハビリテーション工学センター、兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所などです。
このなかでも、福祉のまちづくり工学研究所が開発したインテリジェント膝継手や、現在行っている節電義手の研究は、海外に比べ遅れているといわれる研究開発部門において、大きな成果を残しています。こうした開発において、義肢装具士は義肢の専門家として研究に貢献するとともに、工学分野の研究者と実際のユーザーの間に立って研究を支える役目も担ってきました。
その他、臨床面でも、研究開発の面でも、大きな役割を担っている公的機関の義肢装具士ですが、その活躍の場となる公的機関は、民間に移せることは民間にという施策の方針から数が減少しています。
義肢装具士の採用枠も、国立身体障害者リハビリテーションセンター・研究所の補装具制作部で現在6名。ほかではさらに少なく、理学療法士が数十人いる施設でも、義肢装具士は多くて1名の定員枠しかない状態です。
そのため、現在勤務している義肢装具士が定年など何らかの形で辞職する際に、その枠に対しての募集のみが行われるのが通常で、実力とともに、タイミングが合わないと公的機関に就職するのは厳しい状況だといえます。
いまのところは、義肢装具士の採用枠が増えることはなさそうですが、これからさらにリハビリテーション医療が重要視されていくなか、リハビリテーションを担う専門職として、また研究開発を担う一員として、公的機関で働く義肢装具士の存在の重要性が認識されていくことが望まれます。